マーケティングを使う理由の変遷

1、マーケティングを使う理由
「現代経営学」あるいは「マネジメント」の発明者、ドラッガーのマーケティングの定義は、
「販売とマーケティングは逆である。」「マーケティングの理想は、販売を不要にすることである。」「マーケティングが目指すものは、おのずから売れるようにすることである。」。
つまり、マーケティングを使う理由は売り込まなくても売れる仕組み作りといえます。
しかし、マーケティングを使う理由である「売り込まなくても売れる仕組み」は時代とともに変遷しているのが特徴です。

2、1970年代以前
19世紀半ばから20世紀にかけて起きた産業革命によって、アメリカは大量生産・大量消費の時代に突入しました。
需要に供給が追い付かず、消費者に届ければ売れるという単純な社会構造だったのです。
従って、マーケティングを使う理由である「売り込まなくても売れる仕組み」は市場を調査し、規模に見合った商品を届ければ、売り込まなくても売れる時代でした。

3、1970年代以降
1970年代になると、生産性が向上し、需要と供給のバランスがとれはじめたため、消費者に届ければ売れるという単純な社会構造でなくなりました。
1970年代のオイルショックによって経済活動の停滞と物価の上昇が起こったことがきっかけです。消費者が「買い控え」するようになったため、消費者にフォーカスした「消費者を満足させる」ためのマーケティングが求められるようになったのです。
しかも消費者は十分な情報を持ち、簡単に類似製品と比較できるので、製品の価値は消費者によって決められ、その選好はバラバラです。
従って、この時代以降は、マーケティングを使う理由である「売り込まなくても売れる仕組み」は、比較検討で勝ち残れる商品を消費者の視点で作れば、売り込まなくても売れる時代になりました。

4、1995年頃からのインターネット普及以降
1995年頃から、インターネットは一般に使われはじめました。
消費者は主体的に情報を収集・発信できるようになり、ネットを通じてニーズや欲求を満たせる製品サービスが簡単に手に入るようになりました。
先進国では機能・品質面での差別化が頭打ちになったこともあり、「企業のビジョンの表現や社会問題の解決といった面から、製品以外の価値を提供する」マーケティングが求められるようになりました。
従って、この時代以降は、マーケティングを使う理由である「売り込まなくても売れる仕組み」は、比較検討で勝ち残れる商品を消費者の視点で作れば良いだけでなく、社会に対する企業の姿勢を評価されて初めて、売り込まなくても売れる時代になったのです。

5、2010年代からのスマホ普及以降
2010年代に登場したスマートフォンを通じて、SNSでのコミュニケーションが常態化した社会構造の変化を、マーケティングの権威であるフィリップ、コトラーは、「接続性の時代」と呼び、マーケティング4.0のキーワードにしています。
消費者はオンラインとオフラインの間を自由に行き来し、口コミより様々なSNSコミュニティの影響を受け、物事の最終判断するようになりました。
従って、現代においては、マーケティングを使う理由である「売り込まなくても売れる仕組み」は、消費者の所属するコミュニティの愛着推奨を得れば、売り込まなくても売れる時代になっています。

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